プロジェクト

トイカケ:外国籍の住居問題

プロジェクトメンバー

武田一裕 / 常世田航太

プロジェクト概要
  • トイカケとは

私たちは慶應義塾大学の杉原研究会に所属している「トイカケ」です。私たちは家賃支払い能力や日本語力に問題がなくとも、外国籍であるというだけで賃貸契約を拒否されることがある現状を変えるべく活動しています。

  • 外国籍の賃貸契約を取り巻く現状

 

出入国在留管理庁の調査によれば、外国人の5人に1人が住居探しの際に国籍を理由に入居を断られて困った経験があります(1)。「そんなの当たり前でしょ?」「外国人が家を借りづらいのは仕方ないよ」と思うかもしれません。しかし、国籍を理由に入居を拒否することは違法であり、判例も存在します(2)。また、法務省の主な人権課題にも、

「外国人であることを理由に,アパートへの入居や公衆浴場での入浴を拒否されるという事案が生じています。」

 

と記述されています(3)。 何より、他の条件に問題がないのに国籍のみを理由として入居を拒否することは明確な差別です。日本が国際連合の加盟国であるのは、もはや説明するまでもありません。
また、国際連合で採択されている世界人権宣言には

「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。」

 

とされ、また、この内容は「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」(4)と記述されています。しかし、こういった外国籍に対する入居拒否の現状と、それが問題であることを示す根拠が存在するにも関わらず、一般的には国籍に基づく入居拒否がそもそも問題とは捉えられていないのが現状です。マジョリティが問題を認知しなくては、マイノリティの力だけで問題を解決するのは困難です。

 

  • 状況改善のためには

 

現状を改善するため、私たちは行政・企業・社会に対するアプローチを試みています。
「外国籍の住居問題」は家主、仲介業者をはじめとする不動産業界の問題でもあります。そのため、不動産を所管する国土交通省に問題提起し、不動産業界に行動の変容を促してもらうことを考えています。

この問題について取り組む間にも、家を借りられず困る外国籍の人は存在しています。そのような人が希望する物件に住むことができるよう、企業に対して企業名義で部屋を借りる「借上げ社宅制度」導入のお願いをしています。これにより、本問題が直接的な解決に至り、入居拒否が無くなるまでの間、外国籍の方に対する実際的な支援につながります。
また、国籍による入居拒否は外国籍の方が経験する問題であるため、社会の多くを占める日本国籍の人々にはこの問題があまり認識されていません。問題が認識されなければ、解決もされません。そのため、多くの人に問題意識を共有するための広報活動を行い、署名活動の実施を考えています。

 

  • 活動のきっかけ

 

トイカケが活動を開始したきっかけは、研究会の卒業生が実際に入居を拒否された経験にあります。彼女は大学在学中、新卒で就職が決定したことを受けて家探しを始めました。彼女は日本に21年住んでおり、新卒で入社する企業の収入も家賃支払いが滞る心配のない大企業です。それでも、家を5ヶ月間探したのに結局希望する地域に家を借りることができませんでした。その理由は1つだけ。彼女が外国籍であることでした。彼女は永住権を持ち、日本文化の中で育ち、日本語もネイティブです。この状況に疑問を抱いた彼女は大学在籍時に所属していた杉原研究会に相談し、現状を変えるべく活動を始めました。

その卒業生以外のメンバーは外国籍ではなく、賃貸契約を拒否されたこともありません。それでも協力するのは、当事者ではない協力者の存在が重要だと考えるからです。問題の当事者であるマイノリティだけが孤軍奮闘しても成果を得ることは難しいでしょう。ゆえに、マジョリティの協力は大変重要です。私たちは、この活動を通して協力者を増やしつつ、社会がより良い共生の形を築けるように努めていきます。

 

  • 出典

 

(1)出入国在留管理庁. “在留外国人に対する基礎調査”. 2021-02. https://www.moj.go.jp/isa/content/001341984.pdf, (参照 2022-11-10).

(2)裁判所. ”裁判例結果詳細”. https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=35320, (参照2022-11-10).

(3)法務省人権擁護局. ”主な人権課題”. 法務省. https://www.moj.go.jp/JINKEN/kadai.html, (参照 2022-11-10).

(4)国際連合広報センター. ”世界人権宣言テキスト”. ​​https://www.unic.or.jp/activities/humanrights/document/bill_of_rights/universal_declaration/, (参照2022-11-10).